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人前結婚式(2)
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~ 坂元昮さん、文子さんの場合 ~
新郎坂元昮さんは東大文学部心理学科卒、大学院博士課程にある若き学徒、新婦今井文ん子さんは、桐朋学園の英語の先生。波多野完治、勤子ご夫妻のグループによって、四年越しの恋愛が結ばれたもの。二人の門出にふさわしく、華美、虚飾に流れず、質素な、しかも内容をもった会にと、ご両人協議の結果、次のような人前形式とされました。昮さんの手記をご紹介しましょう。
招待状とプログラム
横書きにして、季節のあいさつ抜き、表題をつけて、一目で内容のわかるようにした。返信用のハガキには、自分のあて名のわきに小さく「さま」をつけた。お仲人と書いたら、波多野先生におなかだちと訂正された。プログラムは、友だちが作ってくれた。みんなで歌う「埴生の宿」の譜面もプリントしてくれた。
第一部 結婚式 (人前形式)
結婚式は、第一部 結婚式(人前形式)、第二部 結婚学ゆうもあシンポジウム、と二部に分けた。
第一部は、
新郎新婦紹介 波多野完治、波多野勤子。
これは、お茶の水女子大においての波多野パーティーから二人の結ばれるまでの紹介であった。
婚姻届に署名、調印 新郎、新婦
皆の前で、しかも二人の両親と、おなかだち夫妻の立ち合いのもとで、婚姻届にサインをし、自分たちの印をそれぞれおした。
憲法第二十四条と抱負 新郎、新婦
そして次に、皆の前で、二人が声をそろえて、憲法第二十四条を読み、抱負を述べた。これが、私たちの、神様を全く抜きにした、人前形式の結婚式だった。信じもしない神様に誓うより、生きて、これから私たち二人をあたたかく見守り、育ててくださる人さまに向かってのほうが、はるかに誓いがいがあるからと思ったからだ。
抱負は、二人「私たちは憲法第二十四条の示すワク内において」
昮「ケンカをしたり」
文子「わが儘を言い合ったりしながらも」
昮「おおらかに」
文子「そしてのんびりと」
二人「暮らしてゆきたいと思います」
と、二人いっしょと、一人ずっと、交互に述べた。
乾杯 田申良久
そして昮の先生の乾杯で、一部は終わり、そのまま二部に移った。
第二部 結婚学ゆうもあシンポジウム
出席者全員の紹介
知らない人どうしが隣り合うときのことを考えて、一テーブルには約十人にすわってもらい、知人が一人もいないで困ることのないようにした。そのうえ、会の早いうちに一言ずつ出席者を紹介して、お互いどうしが話しやすくした。
結婚学シンポジウム(結婚学談話会)
伝統的な結婚式では、偉い人が偉い順に話をすることになっている。それがただ新郎新婦を苦労してほめあげるだけのことが多い。これでは、新郎新婦はよい気になるかもしれぬが、多分にテレるだろうし、また、ほかのお客さまはおかしくてしかたないであろう。そんなことなら、いっそスピーチを省くほうがよいかもしれぬ。しかし、この機会に、二人が生活してゆくうえに有益なことばを、二人の聞きたい方の口から伺いたいと、話の題を申し上げて、それについて一席伺うことにした。「学問と結婚」「結婚墓場論」「結婚にちなむ小話」「ヨーロッパ若人の結婚」「わが子の結婚」など、さいわい、その道の大家ばかりおられたので、たいへん有益だった。テープに記録しておいたので、一生の記念になると思う。
みんなで歌う歌 「埴生の宿」斉唱 全員
伝統的な式では、踊りとか演奏とか、それぞれ名手を依頼して華美を誇るようだが、私たちは出席者全員に斉唱していただくことにした。
昮の弟がテープに入れてくれたピアノの伴奏を聞きながら、文子の友人が指揮をとって、プログラムに印刷された譜を見ながら、偉い人たちも、若い人たちも、一つのふんいきに溶け込んでくださったようであった。
新郎新婦のあいさつ
最後に、二人が立って、「ここに書いてある\"和\"という文字は、二人の友人たちが一画ずつを分担して書いてくれたものです。そこで、これから二人は、この\"和\"の精神をモットーとして、生活してゆきたいと思います」とあいさつし、このあと、波多野完治先生が今日の記念にと書いてくださったものを新郎が、勤子先生のを新婦が読んだ。勤子先生のは、「昨夕、私は三役女房ということばを思いつきました。妻となり、母となっても仕事をつづける一人三役の女房という意味です。おそらく文子さんはこれをじょうずにやってのけられるでしょう。タカシさんもこれを応暖してあげてください」という、働く文子にとって、まことに意味深いことば。新郎は、「私などはさしずめ幕下亭主です」とオチにして大笑い。ちょうど相撲の時期で、三役にかけたことばである。
最後は、二人が会場の入口でお客さま全部のお見送りをした。
うれしかったこと
父のあいさつこうした式にもってくるまでには、私は生まれてはじめて父とケンカをした。でも、会がスムーズにうまくいって、ほんとにうれしかったし、父が、伝統的な式に慣れた四十才以上の偉い方々に、格付けをせず、演題まで指定した子どもたちの非礼をわびてくれたのは、ほんとにありがたかった。
記念のサイン
会の途中でサイン用紙を渡して、一人一枚ずつ、お祝いや激励のことばを書いていただいた。これはあとで製本して、テープとともに一生のよい記念になると思う。
母と妹のえつ子が連名で「まず健康」。
この笑顔このいたわりをいつまでも簡潔でなかなか味のあることばだ。
飾りつけ
受付け、配席、席の名、テープ、写真、\"和\"の金文、プログラムの作製、司会、くだものの購入、歌唱指導など、みんな友だちだやってくれた。特に壁面の\"和\"の文字は、デザイナーの友人の発案で、中国語の専門家が選んだ金文で、友だちが一画ずっ書いたもの。すごく会場を引きしめてくれた。席を五つに分け、オメデトウの頭文字をとって、オはオレンジ、メはメロンというふうに、その物を飾って席の名と七たことも、楽しいアイディアであった。こうして、みんな二人の友人たちがやってくれたことは、当日の最大の贈り物だったといえよう。
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